子守唄は木遣り

木遣り(きやり)というのは「唄」、しかも労働歌。で、
何言ってんだか一文字分が長~くて、歌詞も理解できないような
悪く言えば唸ってるみたいな歌。
言葉で表現しようとしても書きようがないけど、仕事のときの
掛け声というのかなぁ。みんなで力をあわせてひとつの仕事をするとき、
タイミングを図って力を入れる方法として歌になったのかもしれない。
とにかくその木遣りも、梯子乗り同様、鳶職の伝統なのだ。
 
ウチのかわいいRYU君は、ジィジの背中で眠るのが大好き。
おんぶしてもらって散歩に出ると、5分もしないで熟睡する。
しかも、暖房のため閉め切った室内にまで聞こえてくるような
木遣りが子守唄なのに!だ。
またウチのジィジの声は ただでもデカイのに、歌うときと怒るときは
更に大声で、生の声が聞こえてきても「拡声器付いた車が来たかな?」
と間違うほど。
それを聴きながら熟睡できるなんて、こいつはなかなかツワモノだぞ!?
 
そんなジィジと私は、よく喧嘩をする。
仲良さそうに見えて、実は良すぎて喧嘩が絶えない。
 今日もそうだった。
ガンセンターの領収書兼予約票を私が片付けて捨てたという。
まるで私が犯人かのように「俺のものを勝手に片付けるな!」
と捲くし立てるので、私も思いっきり言い返す。
この人に、こんな風に大声で怒鳴り返せるのは私しかいない、多分。
「これはストレス発散のひとつの手段だ」と思うのだけれど、
あんまり長いと体力を消耗する。
去年は喧嘩した翌日に健康診断だったが、胃潰瘍だった。
   怒鳴ることもないのになぁ、疲れてるんだろうな、
   そう言えば昨日疲れたって言ってたな・・・。
 アタシも、こんなにムキになって言い返さなくても
   「え~?私が捨ててしまったのかもしれません。
    どうしましょう?うっかりしていました、ゴメンナサイ。」
 といえばいいのは百も承知なんだけど、捨ててないものは捨ててない。
 ここで急にシオラシイ態度になってしまっては、かえって父を侮辱した
 ように思われるだろうから、捨ててないを主張するぞ!
 
自分で言うのもいやだけど(笑)、父と私はすごく似ていて
いいところが似ているのはいいんだけど、嫌なところが似ていると
反発する力が100倍くらいになる。
でもこの喧嘩は、ストレス解消法なので、バーッと言うと後はスッキリ。
父は鼻歌うたいながら台所で魚を焼いていた。
私も、バリーの散歩に出たら、
「あ、そういえば、机の上にゴミと一緒に予約カードがあったなぁ。 
 失くしちゃいけないと思って、カレンダーに貼り付けたんだった。」
と思い出した。帰って見たら、ちゃんとあるじゃないか!
だいたいさぁ、突然怒りだしたから、何をなくしたのか全然わからなく
なっちゃったんだよぉ。
「病院の領収書を捨てただろう?」って言いがかりをつけてきたのよ。
「捨てるわけないでしょ?」「捨てたんだろう?」と言い合いしてたけど、
領収書じゃないじゃん。
最初からちゃんと説明してくれれば喧嘩にならなかったのに。
エネルギーだけが消耗されたわけか。
 
さてと。これを私がカレンダーに貼り付けたとバレると、また
「やっぱりお前が勝手に俺のものをいじった」とか言うんだろうから、
打つ手を考えないと。
イモウトが気を利かせてくれたことにしよ~っと。
 
RYUちゃんも、背中で木遣りなんか聴いてると、
私みたいになっちゃうんだろうな・・・かわいそうに!?